syghの新フラグメント置き場

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エヴァ新劇場版に見る日本のCGの安っぽさ

YouTube公式チャンネルで「ヱヴァンゲリヲン」新劇場版3作(序破Q)が2020-04-29まで無料公開されています。
今年2020年にようやく完結編(?)の「シン・エヴァンゲリオン」が公開されることが決まっていますが(ただしその後延期されることも発表されました)、Qの公開2012年からすでに8年近くが経過しているので、これまでの作品を無料公開したほうが既存ファンのより戻しや新規の獲得も見込めるとの判断なんでしょうね。

個人的にはTVシリーズの「新世紀エヴァンゲリオン」と旧劇場版のほうが好きです。TVシリーズの最終回とか、さんざんボロクソ言われてますが、量産機と弐号機のバトルなど、手描きのセルアニメのピークに立ち会えたことは確かでした。あの巨大感と重量感は今の手抜きCGアニメでは絶対に出せません。あと青い零号機のほうが好きなんですよ。雨の降りしきる中、黙々とロンギヌスの槍を投擲して衛星軌道上の第十五使徒アラエルを屠るシーンとかね。忘れられないですね。庵野監督は当時TV版も旧劇場版も物語として完結させるつもりがなく、視聴者や観客に委ねるというより単に責任を放棄して投げ出しただけなんじゃないでしょうか。

新劇場版も、もちろん公開当時観に行きましたよ。序は比較的TVシリーズに近い流れでしたが、TVシリーズのほうが時間をかけて丁寧にキャラクターを描写してストーリーを組み立てているので、どうしても物足りなさを覚えました。何より、CGがチープで、観ていてつらくなりました。破からはさらに狂ってきて、Qはイライラしか感じませんでした。今回、せっかくなので再度観直してみましたが、やっぱり同じ感想しか抱けないですね。特にQは大人も含めて登場人物ほぼ全員がコミュ障です。TV版や旧劇場版に輪をかけて悪化してます。シンジ君の理解者であったはずのミサトさんがクズになっていて悲しくなりました。誰かシンジ君に状況説明してあげろよ。説明しないからおかしなことになるんだろうが。変なCGのお舟でドンパチなんか見せられても面白くもなんともないんですよ。せっかく旧作からストーリーを変えるのであれば、もっとカタルシスが欲しかった。TV版の第十四使徒ゼルエル戦のカタルシスに比べたら、破は実に締まりのない、拍子抜けする結末でした*1。あと破以降はキャラクターデザインや動きにクセがあって好みでないというのも少なからずあります。

……と、ここまで来たところでようやく本題ですが、日本の映画・ドラマは実写/アニメ問わず、CGの使い方が本当にヘタクソだと思います。実写のCG合成のチープさは言わずもがな、アニメの場合は手描きの部分となじんでなくて、動きもぎこちなく、見るからにCGと分かるので萎えるんです。手描きの背景上でCGのクルマが動いているシーンとか、明らかに浮いていて悲しくなります。トゥーンレンダリングしただけで終わりとか正直ナメてるんじゃないでしょうか*2。CGが便利なのは分かりますよ。大量に同じオブジェクトを配置して連動させるのも簡単ですし、カメラやライティングを変えていくらでも撮り直しができます。手描きでは人件費がかかりすぎてしまう作画工程も、一度3Dモデルを作成すればモーションやモーフを付けるだけで済んだりしますしね。
でもね、俺はCGで描かれた無機質なエヴァンゲリオンが見たいんじゃなくて、多少描き手によってバラつきがあってもいいから血の通った「人造人間エヴァンゲリオン」が見たかったんですよ。エヴァはロボットじゃないんでね。CGのエヴァをクルクル回してドヤ顔をされても、何の感慨も湧きません。安っぽい人形劇が見たいんじゃなくて、群像劇が見たいんです。

日本のCGは、どこまで行っても古いゲーム(PS1/PS2世代)のリアルタイムCGどまりなんです。ポリゴンにテクスチャを貼っただけのビルボードエフェクトとか、いつまで経っても古いゲーム準拠の手法なので、チープさが抜けません。むしろ解像度や画質が上がることで逆にチープさが際立ってしまっています。それはこれからも同じように続いていき、取り残されていくのだと思います。

*1:拍子抜けという意味では旧劇場版にも通じるものがありますが、新劇場版の破とQは上げて下げるのではなく、最初から最後まで低空飛行な印象を受けました。

*2:AKIRAのように表現目的でCGをピンポイントかつ効果的に使用するのであればともかく、手抜きのためにCGを使い始めたら終わりです。