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となりのトトロの舞台とうちの実家を比べてみる

8/14に金曜ロードショーでトトロが放送されるとのことで、久々に観てみました。そういえば最後に観たのは学生の頃、もうピー年以上昔です。

いやあ、映画って本当にいいものですね。改めてトトロの普遍性に驚かされました。時代設定である1950年代当時の「日本の里山」と「普通の生活」が丁寧かつ活き活きと描写されていて、まったく色あせないどころか、むしろ輝きを増している感すらあります。

トトロは映像・音楽・脚本・キャラクター造形、いずれも総合的に極めて高い芸術レベルでまとまっているのですが、音楽や歌声が感情を揺さぶる大きなポイントになっていることに気付かされました。メイが小トトロを追いかけるシーンでは映像と音楽が完全にシンクロしていて、遊び心満載の演出には子どもだけでなく大人まで夢中になってしまいます。トトロでは民族音楽的で軽快なサウンドも多く使われているのですが、エキゾチックなのにどこか懐かしさを感じさせます*1。エンディングでは猫バスが駆け抜けていくシーンに、純真で明るくもどこか切ないテーマソングのイントロが重なり、胸がいっぱいになるほどの懐かしさとともに心洗われるカタルシスがあります。映画はやはりこうでないと。

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そういえば冒頭の草壁家の引っ越しシーンで屋根裏部屋に通じる急勾配の階段が出てきますが、自分の母方の実家や父方の実家にも、二階に通じる急勾配の階段がありました(今も残っています)。母方の実家では、二階に古いおもちゃや本が置いてあり、よく弟や親戚の従兄弟と昇り降りして遊んでいました。両家とも、改築前には汲み取り式の便所や五右衛門風呂も残っていました。父方の実家では近代的にリフォームしたものの、今も薪で焚く風呂です。昔は風呂場の天井に脚の細長いユウレイグモがよくぶら下がっていて怖かったのと、鉄の釜だったので焚いた直後は火傷するほど熱くて苦手だったのですが、弟や従姉妹と一緒に入って遊んだのは良い思い出です。母方の実家では昔牛を飼っていたのを覚えています。農機具置き場の隣に牛舎があり、台所のすぐそばでした。掘りごたつもありましたね。祖父が風呂焚きで出た木炭をスコップで入れてくれていた光景を、今でも匂いとともに鮮明に思い出すことができます。平成初期の頃は、まだ昭和の名残があちこちにありました。

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トトロの舞台のモデルとなったのは東京都と埼玉県にまたがる田舎の集落だそうですが、ローカル線とはいえ電車が通っていますね。うちの父方の実家は電車どころかバスも通りません(最寄りのバス停までは3キロほどあり、しかも長い山道を越えていく必要があります)。「のんのんびより」や「だがしかし」とか、田舎が舞台の漫画でも小さなローカル線の駅が描かれていることがありますが、近くに電車やバスがあるだけマシです。本当のド田舎には電車なんてなく、移動手段がクルマ(自家用車もしくはタクシー)しかないんです。

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トトロでは鎮守の森の御神木として大きなクスノキが象徴的に描かれていますが、広葉樹から成る雑木林は生態系の豊かさの象徴です。日本の田舎には、戦後に無思慮で無能な役人どもが考えた植林政策の一環で大量に植えられたスギやヒノキばかりになってしまった人工針葉樹林が腐るほどあります。実際に腐っています。国産木材の価格が暴落して、木を切って売っても採算が合わないので、今では間伐や手入れも全くされていません。台風による豪雨や大雪で折れた木々が狭い道路をふさいでしまうこともよくあります。マツもありますが、マツクイムシの影響で無惨に立ち枯れしています。少子高齢化林業に携わる人も減っています。うちの父方の実家も雑木は多少ありますが、やはり針葉樹のほうが圧倒的多数を占めています。里山という感じではありません。裏の田んぼや畑に通じる小道には木小屋があり、昔はクリの木があって実をつけていたのですが、小道を整備して砂利を入れるときに切られてしまいました。カキの木はまだ残っています。

ところで1950年代でサツキが小学6年生(12才)ということは、サツキは戦中の生まれということになりますね。あまり想像できないのですが、もしそのまま大人になったとすれば2020年現在は70代から80代でしょうか。宮崎駿監督の「となりのトトロ」は、高畑勲監督の「火垂るの墓」と同時上映だったそうで、ともにまごうことなき珠玉の名作ですが、戦後・戦中で明暗が分かれる形になったのは、単純に両監督の作家性の違いという一言だけでは片づけることはできないと思います。しかし改めて80年代というのは本当に良作アニメがたくさん生まれた時代でした。クリエイターの皆さんには、もっとがんばって欲しいのですが、一方で観客・視聴者たる我々も投資する作品は考えるべきです。

しかしTV局の人間ってのは、あいかわらず本編放送中に余計なテロップを入れるような無粋なことをするんですね。本当に作品に集中していれば、dボタンなんか使っているヒマなどありません。スマートフォンでネットサーフィンしながらでも見られるような、つまらなくて退屈な番組と一緒にしないでほしい。それに次週の予告はCMで散々流しているんだから要らないでしょうに。連中にとっては作品の中身や視聴者の体験よりも広告のほうが重要なんでしょう。地震速報などであれば命に関わることなので仕方ありませんが、入れなくてもいいものを無理やり入れようとするそのセンスの無さには絶望しかありません。視聴体験を重視する場合は円盤を買えばいい話なんですが、たとえ持っていてもTV放送で観たくなるのが名作なんです。

画像出典:スタジオジブリ公式サイト
www.ghibli.jp

*1:聖剣伝説」シリーズの菊田裕樹サウンド民族音楽的なのですが、自分はこういった音楽に惹きつけられるようです。