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無印セーラームーン全話視聴した感想

YouTube東映動画公式が4月から毎週10話ずつ「美少女戦士セーラームーン」オリジナルアニメ(旧アニメ)シリーズ3作を公開してくれているので、このたび遅ればせながらセーラームーン観てみました。

良いですね。素晴らしいです。やはりセーラームーンセルアニメでなくては*1

以下、壮大なネタバレが含まれる感想なので、未視聴の方はお帰りいただいたほうがよいかもしれません。その場合はまず、dアニメストアで無印セーラームーンを最後までご覧ください。

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セーラームーンと俺

今から時をさかのぼること28年。セーラームーンのTVアニメが放送開始されたのは1992年でした。実は小学生の頃、リアルタイムで途中まで観ていたことがあります。「ひみつのアッコちゃん」(1988)とか「魔法使いサリー」(1989)とか、魔法少女もの*2は普通に観ていたので全然抵抗なかったんですよ。というか前番組の「金魚注意報!」を観ていたので、その流れで観始めました。第1話の変身バンクやタキシード仮面登場シーンが特に印象的でしたね。なんじゃこりゃ新しいなーでもお茶目でコミカルで可愛くてエッチだなーと思ってました。確かセーラーマーズが出てくるあたりまでは観ていたんですが、ただ放送時間帯が夕食時で、女の子向けのアニメ(しかもちょっとエッチな変身シーンあり)を親や祖父母と一緒に観るのは小学生男子としてさすがに抵抗があり、だんだん観なくなってしまいました*3。本当はものすごく興味あったんですけど。ちなみに当時はコミックボンボンが愛読書でした。セーラームーンネタをぶっこんでくる漫画家さんもいましたね。本山一城先生とか。講談社だからいいのか。

時は流れ、2015年。リメイク版・セーラームーンCrystalがTV放送されました。オリジナルとどう違うのか、興味本位で観たんですが、キャラクターデザインがとげとげしく、作画もひどくて、登場人物の掘り下げも中途半端で印象が薄い。原作漫画の世界観ばかり重視して愚直にアニメ化した反動なのかは分かりませんが、とてもじゃないけど面白い作品とは言えませんでした。特に変身バンクがCGとかどういうことよ(これが一番許せない)*4。旧アニメよりも原作に寄せて制作されたと言われていますが、ハッキリ言って旧アニメの良さを逆に際立たせただけの凡作に終わりました。旧アニメから20年経って進歩したかと思いきや、完全に日本のアニメ業界は衰退していました。もはや見る影もありません。三石琴乃さんも年齢を重ねてベテランになり、残念ながら当時の初々しさはなくなってしまっていました。もちろん声優さんも人間なので、これは仕方のないことなんですが、他のキャラクターはキャスト総入れ替えなのに主役だけ続投というのはどうも中途半端です*5。第3期まで我慢して観ましたが、プリキュア臭にまみれたデジタルアニメの弱々しさだけしか印象に残っていません*6

再び時は流れ、2020年。もっと早く旧アニメを観ておけばよかったと激しく後悔しています。やはり旧アニメのスタッフは偉大でした。この先、いくら小手先の技術が進歩しても、旧アニメを超えることはできません。なぜならば、旧アニメのセーラームーンガンダム同様、時代が生んだ作品だからです。

HEART MOVING

無印は終盤、三石さんが病気療養のため一時降板されるのですが、荒木香恵(現・荒木香衣)さんが急遽代役として月野うさぎセーラームーンを演じることになったというエピソードは恥ずかしながら今回初めて知りました。交代初回の44話ではやはり違和感がありましたが、45話以降は脚本や演出もあいまって、まったく違和感のない、もう一人のうさぎちゃん/セーラームーン/プリンセス・セレニティを演じられていたと思います。三石さんも1年間ともに走り続けてきた仲間たちと最終回に参加することができず、さぞ無念だったでしょうけれど、その想いはきっと荒木さん、久川さん、富沢さん、篠原さん、深見さん、古谷さん、潘さん、そしてすべてのセーラームーンスタッフに届いていたから、伝説の最終回が生まれたのだと思います。まさにムーンライト伝説。誰がうまいこと言えと。

無印では初代ED曲「HEART MOVING」のインストゥルメンタル・バージョンが要所でBGMとして流れて物語を盛り上げてくれます*7。特に第42話、45話、46話(最終話)では絶妙の使い方がされていました。これらの回は特に印象深くて2回ずつ観たんですが、42話での美奈子ちゃん、45話・46話でのうさぎちゃんのセリフに涙がこぼれました。45話・46話では荒木さんの声質もあいまって、これまでのコミカルな作風と終盤の悲壮感の落差がすごいんです。強敵・DDガールズとの戦いで、ジュピターが、マーキュリーが、ヴィーナスが凄絶な最期を遂げ、とうとうマーズと二人だけになったとき、セーラームーン/うさぎちゃんはこういって引き留めようとします。

「後はあたし一人で全部やるから、全部やっつけて、クイン・ベリルもやっつけて帰るから、レイちゃんは先に帰ってて……死んじゃいやだよ……」

本当は戦いたくないのに、いつもケンカばかりしているけれど大切な人をもうこれ以上失いたくないから、自分ひとりで戦おうとするんです。今にも崩れ落ち泣き出しそうなセーラームーンを励まし、明るく振る舞うマーズ。しかし、結局マーズも苦しい戦いののち、敵を道連れにして命を落とします。ひとり残されたセーラームーンは絶望に打ちひしがれ、これは夢だよと言って逃避しようとしますが、死してなお希望を託し語りかけてくる4人の仲間の声に押され、再び立ち上がり、最後の戦いに向かって懸命に走り出します。ダメだ、書きながら涙が出てきた。

自分はセーラージュピターが一番好きなんですが、やっぱりセーラームーンも健気で素敵ですね。再認識しました。ちゃんと使命を全うする主人公していて、これは確かにみんな憧れますわ。

このように、旧アニメでは脚本・映像はもちろん、演出・音響にも抜かりはありません。

以前、TV版「機動戦士Ζガンダム」について語ったことがありましたが、ゼータガンダムでも「水の星へ愛をこめて」の感傷的・叙情的なインストゥルメンタル・バージョンがBGMとして使われることで、物語の悲劇性を高めるのに重要な役割を果たしていました。音楽は大事ですね。

後期EDの「プリンセス・ムーン」や、セーラームーンRのED「乙女のポリシー」も良い曲ですね。ピアノで弾けるようになりたい。

とりとめもなく語りましたが、言葉では伝えきれません。セーラームーンに少しでも興味が湧いた方は、せめて無印の全46話だけでも観てください。これは観ないと人生損してます。

もちろん我らがdアニメでも観られます。後でまた観返そう。

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*1:最近のアニメはデジタル作画になってから、画面のノイズがなくなりキレイにはなりましたが、皮肉なことにそのせいで立体感や存在感がなくなり薄っぺらく見えてしまうのです。実は多少ノイズがあるほうが情報量が増え、画面が豊かに見えるようになるそうです。何より、均一なデジタル線画や塗りよりも、ちょっとした揺らぎのある手描きのアナログ線画や塗りのほうが温かみがありますね。

*2:そういえば「オズの魔法使い」とか「エスパー魔美」とか「チンプイ」とか世界名作劇場とか、女の子が主人公のアニメは結構よく観ていました。昔はゴールデンタイムのアニメが充実していましたね。

*3:確か「まんが日本昔ばなし」と放送時間帯が同じで、家族みんなでご飯を食べながら観るときはこちらが優先されていたような記憶もあります。

*4:変身バンクがCGになったのは制作費をケチった結果なのかどうかは知りませんが、素人目にも分かる手抜き具合です。あんなものにOKを出す監督やプロデューサーがいるなんて信じられません。本当に作品を愛していてコンテンツを延命する気があるのであれば、きちんと作品に向き合って本気で作って欲しいです。旧アニメも当初は低予算だったと聞きますが、そんな風にはまったく見えません。むしろセーラームーンに関してはヘタな延命措置など不要で、旧アニメは10年どころか30年先でも鑑賞に耐えうる普遍性を持っていることが図らずも証明されました。

*5:聖闘士星矢でキャスト総入れ替えして爆死したのを引きずっているんでしょうか?

*6:ドラゴンボール超といい、鬼太郎といい、聖闘士星矢といい、最近の東映アニメは一様にプリキュア臭がひどくてイライラします。どれも似たような絵コンテ・線画と色彩設計で、動きやカメラワークも画一化されていて多様性がないんです。登場人物も薄っぺらいのが多く、人の話を聞こうとせず一方的に気持ちを押し付け自分語りするだけのコミュ障の性格設定が増えています。要するに会話が成立していない。あと公開予定の劇場版Eternal、なんか色が白っぽくて薄すぎじゃないですか?

*7:この頃はまだ昭和末期の匂いを残した曲が多く、どことなく懐かしいメロディーですね。