syghの新フラグメント置き場

プログラミングTipsやコード断片の保管場所です。お絵描きもときどき載せます。

そろそろX線技術関係者としてひとこと言っておくか

X線関係部署への転属が決まって1年経ちました。自分はほぼ完全なソフトウェア、しかもアプリケーション屋なので、線量測定バッジを付けて作業するようなことはハードウェア屋の人に比べると少ないのですが、漠然とした不安はあります。どうしてこうなった……という思いもあります。

こんなウェブページがあることをご存じでしょうか。
原発がどんなものか知ってほしい(全)

ネット上ではその真偽が議論され、いわゆる「専門家」や「有識者」によって「嘘にまみれた怪文書」とみなされているそうです。
ですが、この文書が本当に真実を伝えているものなのか、それともデタラメな怪文書なのか、それは他人に頼らず思考停止せず、読む人がきちんと正しい知識を身につけて自分で判断するべきでしょう。とはいえ膨大な量の専門知識の修得が必要になるのも確かですが……

自分にとってはひとつ気になったというか補足しておきたい箇所がありました。「内部被爆が一番怖い」の箇所、「どんなに厚い鉄でも放射線が突き抜けるからです」という表現。この放射線というのは中性子線のことを指しているんでしょうか? あとここでは「被爆」ではなく「被曝」という漢字を使うべきなのですが今はそんなことはどうでもよくて(本当はよくないけど)、(アルファ線による)内部被曝が長期的健康被害をもたらす危険性があるという意味で恐ろしいのは確かだと思います。

ちなみに5/18放送のサイエンスZERO核融合中性子線による貨物の非破壊検査手法の研究が紹介されていましたが、中性子線による放射化の影響は大丈夫なんでしょうか。原発みたいに長期間放射線に曝露されるわけではないので大丈夫なのかもしれませんが、X線と比べると食品への適用はアウトだと思います。

あと核融合というのは確かに夢のある技術ですが、個人的には生物が持つエネルギーのレベルをはるかに超える、天体レベルのエネルギーを扱う危険な技術であることには変わりないと思います。果たして人間は、人類はそんなエネルギーを「コントロール」できるほどに進歩しているんでしょうか? 医療や生物関係の最先端技術、特に遺伝子工学再生医療分野では科学者の倫理が特に要求される傾向があると思うのですが*1、こういった工業分野での技術者倫理というのは(過去の数多の事故事例が示すように)実にお粗末なように感じられてなりません。単に「こいつはエネルギー革命をもたらす夢のある技術だから、俺たちは何も考えることなく技術革新に邁進し、そしてお前らは何の疑問も持つことなくただそれを推進すればいいんだ」という思考が垣間見えるようで気に入りません。

余談ですが、実は自分は広島県出身で、放射線原子力にはある種のトラウマやアレルギーがあり、正直放射線技術に関わるのは気が進みません。実家の家族にも伝えていません。今関わっているのは検査や医療技術のような「真の」平和的利用なのでギリギリこらえている状況ですが、昔、大学の学部主催による工場見学旅行のあと、友人(鳥取県出身)と就職先について話をしたことがあり、当時「たとえ大企業へ就職できるのであっても、自分は原発では絶対に働きたくない」とこぼしたことがあります。彼はそのとき不思議そうな表情をして、「なんで?」と問い返してきましたが、2011年3月をもって当時の自分の考えはやはり間違っていなかったと確信しました。

下記は原発がいかに危険なものか、そして再稼働不要論をまとめた記事です。東京五輪を推進した日本の関係者、そしてロクな科学的知識もないのに上っ面だけのプレゼンテーションにだまされて五輪開催地を決めたIOCは国際社会に対する大罪を犯したも同然でしょう。こういうことをするとすべての外交努力が無駄になるってのが分からないんでしょうか。
なぜ原発再稼働に反対するのか

最後にお勧めの映画を紹介しておきます。

この映画がリアリティに満ちている理由のひとつとして、劇中で手抜きの配管溶接欠陥検査があやうく大災害の引き金になるところだったと設定している(現に国内原子力災害事例の多くは設計ミス以上に施工や運用上の手抜きが原因になっている)ということが挙げられると思います。

*1:再生医療分野のほうでも、ごく最近とんでもなくお粗末な事件を起こしてくれた人達がいましたが……